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LEDパイロットランプ付き壁スイッチの分解

パイロットランプ付き壁スイッチ(住宅用埋込みスイッチ)

通常パイロットランプを点灯させるには下図のように電源ラインのもう片方(赤色ライン)が必要です。

ところが住宅等の壁スイッチでは電源ラインの片方(ホット側)だけを開閉するタイプ(いわゆる片切りスイッチ)が大部分で、電源ラインのもう片方はスイッチ筐体には引き込まれていません。つまりスイッチ筐体に内臓されているパイロットランプを点灯させるには何らかの工夫が必要です。

 

 

 

 

 

2つのタイプのパイロットランプ付き壁スイッチ

パイロットランプ付き壁スイッチは大きく分けて2タイプあります。1つはスイッチオフの時に光るタイプで、主に照明に用いられるものです。暗い状況でもスイッチの位置を確認できるメリットがあります(ホタルスイッチなどと呼ばれています)。もう1つはスイッチがオンの時に光るタイプで、換気扇などに用いられています。

左写真がスオッチオフ時に光るタイプ、右写真がスイッチオン時に光るタイプです。よくよく見るとランプに違いがあります。左のオフ時に光るタイプはオレンジ色に光るネオン球で、右のオン時に光るタイプは赤色LEDです。

 

 

 

まずはスイッチオフ時に光るネオン球ランプ付き壁スイッチの仕組み

なぜ今時に、こんな古典的なネオン球と呼ばれる放電管を用いてるのでしょうか。それは、ネオン球は放電を開始できる大きさの電圧を与えれば光りだし(放電を開始し)流れる電流はとても小さいものいです。下図のように配線すればスイッチオフの時に負荷を介しネオン球に微小な電流が流れて点灯可能なのです。スイッチをオンにすれば電流はスイッチSWにバイパスされネオン球には電流が流れません。このようにしてスイッチオフ時のランプ点灯を可能にしているのです。ここでちょっと気になるのがスイッチをオフにした状態で負荷に微小な電流が流れてしまうことですが、このタイプのスイッチが用いられる負荷はたいてい照明器具で、また微小な電流ですので実用上の問題は特にありません。

 

 

ではいよいよ今回分解するスイッチオン時に光るタイプです。

 

スイッチオン時に光るLEDランプ付き壁スイッチの仕組み

スイッチをオンすると光るタイプのパイロットランプ付きスイッチにて電源ラインの片側だけでランプを点灯させるには負荷に流れる電流を検出してパイロットランプを点灯させる必要があります。つまり何かしらを通電ラインに挿入して電流を検出する訳ですが、負荷に影響を与えない程に低インピーダンスである必要があります。またLEDを光らせる電力も得なければなりません。ではどうすればいいのでしょうか?ヒントは壁スイッチが扱ている電気の種類が交流であることを利用するのです。つまりトランス(変圧器)というものを利用してるんです。

 

 

スイッチオン時に光るパイロットランプ付き壁スイッチを分解

分解するスイッチは松下電工(現パナソニック)のWN5241です。

では分解していきます。

止めている金具をラジペンで曲げて開ける、いきなりスイッチを構成する電極やらバネやらがバラバラに飛び出て来ました。組み立ては無理ぽいです。不可逆分解です。

 

この黒いプラスチックモジュールの中にパイロットランプ(LED)を点灯させるためのトランスなどの回路が入ってそうです。

 

白い表示部と黒いプラスチックモジュールを分解すると。

黒いプラスチックモジュールの中はトランスだけでした。LEDとトランスだけで他の電子部品はありません。何故かLEDの電流を制限する抵抗器が見当たりません。

 

このASSYに交流電流を流してみると。

ちゃんと光りました。

ついでにトランスの拡大写真をば。

これがパイロットランプ(LED)を点灯させるためのTDK製の薄型トランスです。

このトランスの特性をLCRメーターで測りますと。

1次コイル(ライン側):インダクタンス0.08uH、レジスタンス0.01Ω

2次コイル(ランプ側):インダクタンス5mH、レジスタンス85Ω

です。

このように1次コイルは太いエナメル銅線を数回巻いた感じで、2次コイルはかなり細い線を数百回巻いた感じのトランスとなっています。インダクタンスから算出すると1次コイルと2次コイルの巻数比は約1:250です。

 

 

 

スイッチオン時に光るパイロットランプ付き壁スイッチの回路図(一部推測)

このスイッチの回路は下記のような感じです。

 

巻数比がとても大きなトランスにより負荷に流れる電流を電圧に変換してLEDを点灯させています。言い方を変えると、昇圧トランスの1次コイルL1のインピーダンスに生じる微小な電圧を250倍にして2次コイルL2から取り出しLEDを点灯させているとも言えます。

上図の電流制限抵抗Rsは部品としては存在しません。トランスの2次コイルの銅損(直流抵抗分)85ΩおよびL1とL2の結合係数を電流制限抵抗として利用しているのだと思います(推測です)。LEDモジュール内部回路も勝手な推測です。発光量を安定させるためにツェナーダイオードなどでLEDに印加される電圧にリミッターを掛けれいるのだと思います。

 

投稿:2016/10/5

加筆修正:2018/3/15

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