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スイッチング電源回路の根本基礎の理解(その2)昇圧型コンバータ

昇圧(ステップアップ)型DC/DCコンバーターの基本構成


昇圧(ステップアップ)型DC/DCコンバーター(スイッチング電源回路)の基本部分の構成図。
フィードバック制御部は除外して骨格部分を考える。
一見、降圧(スッテプダウン)型DC/DCと同じ用に見えるが、コイルLとSW1(SW2)の位置関係が異なる。
降圧(スッテプダウン)型DC/DCコンバータはこちら参照




動作を超簡単に言うと、コイルに流れる電流をスイッチ素子SW1(通常はMOSFETなど)によってチョッピングしコイルに電流を蓄える、コイルに蓄えた電流をコンデンサCに吐き出し出力電圧Voを得る。そんな感じ。
ここまで大雑把に書くと、昇圧も降圧も同じ。要するにコイルに電流として貯めたエネルギーをコンデンサーに移し電圧として出力する。この動作を高速に繰り返す。昇圧型と降圧型ではコイルLとSW1(SW2)の位置関係が異なるだけだが、それが大切。

ちなみに、SW2はSW1がoff時にコイル電流を還流するためのスイッチでSW1とは逆転(逆相)の動作をさせる。ダイオードであっても構わない。(実用的にはダイオードの場合、PNジャンクションの順方向電位があり効率が低下するのでSW1と同様のMOSFET等が望ましい)


基本動作を考察する

上図にて、SW1がon(SW2がoff)の時(デューティサイクルT1)とSW1がoff(SW2がon)の時(デューティサイクルT2)各々の時間領域でのコイルLに流れる電流の変化分について考える。
ただし、本質を分かり易くするために、各素子は完璧に理想的なものとする。(つまりスイッチ素子のオン抵抗やコイルの内部抵抗などは全てゼロと考える)




DC/DCコンバータにおける2つの動作モードに関する考察



ちょとまとめ

● 回路を構成する各デバイスが全て理想的(損失が無い)とすると
上式Cのように、出力電圧Voは入力電圧Viとスイッチング時間比率T1/(1+T1/T2)により決定する。
例えばT1=T2とすると2倍の出力電圧となる。T1>T2と設定することにより理論的には幾らでも逓倍(昇圧)することができる。(もちろん現実的には各ロスやパラメータにより昇圧限界がある)

● 実際の回路では、各デバイスに損失(内部抵抗等)があり、出力電流を取り出すと各損失による出力電圧が低下してしまう。また、上記理論式が示すように出力電圧は入力電圧により変動する。そこで、実用のDC/DCコンバータ回路では、出力電圧Voを検出(モニタ)し、基準電圧と比較し、スイッチング時間比率(T1:T2)を動的にコントロール(フィードバック制御)することにより安定した出力電圧を得ている。



もう少しちゃんと考察

上の考察では、あまりにも断片的なので、今回、もう少し全体的な見地から考察してみる。
シンボル(記号や符号)は上記考察の時とは異なります。ご注意ください。
基本的には上の考察での構成図に同じだが、今回、入力部にコンデンサC1を追加した。もし、分かり難くければ、コンデンサC1の位置に電源VBがあると考えれば上の考察と同様になる。




各部の電圧、電流波形は次のようになる。



ちなみに、コンデンサC1及びC2に流れる電流は次のようになる。



おまけの考察・コイル電流と入力電流と出力電流との関係

電流と時間の積(面積)つまり電荷から、コイル電流ILと入力電流IBと出力電流Ioの関係を考察しておく。





<参考資料>
(1)スィッチングコンバータの基礎(原田耕介、二宮保他著 コロナ社)
(2)スイッチングレギュレータ(嶋村弘則著 産報出版)
(3)電子工学ポケットブック(電子工学ポケットブック編集委員会 オーム社)


<サイト内関連リンク>
DC/DCコンバータの根本基礎の理解(その1)降圧型コンバータ
DC/DCコンバータにおける2つの動作モードに関する考察
スイッチングFETでの電力損失(発熱量)の算出


最終投稿:2009/1/14

 

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