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電気の基礎の基礎・電気の速度と電子の速度
電気の速さと電子の速さ
前回「電流とは電子の移動を巨視的に観察したもの」と説明したのですが、では、電気の(電流の伝わる)速度は電子の移動する速度に等しいのでしょうか?
解説
まず結論から言うと。
電気の速さ(電流の伝わる速)さと電子の速さとは桁違いに異なります
電気の速さは概ね光速(30万km/秒)ですが、電子の移動速度は教科書的には電流÷(電荷×電子密度×導線の断面積)で与えられ、1Aの電流を流した場合の電線中の電子の速さは概ねカタツムリ(0.1mm/秒)程度です。
電子はそんなにのんびり動くのに、何故、電気(電流)は瞬時(光速)に伝わるのでしょう?
どのように理解したらいいのでしょうか?
古典的な理解
この電気と電子の速さの違いを理解する手助けとして上図のような「ところてんモデル」や「水流モデル」が一般的に古くから用いらています。例えば、ところてんが充填された長い筒の片側のピストンを押すと、押し出し式に押した瞬間にもう一方の端からところてんが出ます(これが電気の速度です)が、ピストンを押し続けてピストン周辺の粒子が移動(これが電子の速度です)して排出されるまでは随分と時間が掛かります。つまり電流の実体である電子はとてものんびりだけど、その影響(効果)は瞬時に伝わると言うような感じです。
実際的な理解
上の古典的な理解は、あくまでも表面的な比喩であり、多くの矛盾があり実際とは随分と異なるようです。では、実際はどうかと言うと、かなり難解です。最新の物理学では概ね次のように理解されています。
- 導線に電圧が加えられると電場が発生します。
- 場とは空間にストレスが掛かった状態のことで、電場とは電気的ストレス状態の空間のことであり、磁場とは磁気的ストレス状態の空間のことです。
- 電場も磁場も導線の外部の空間に同時に生成されます。
- この電場と磁場のベクトル積<ポインティング・ベクトル (Poynting vector) >が電磁場エネルギー運搬つまり電気エネルギー運搬の正体です。
- よって電磁場の作用であるとことの電磁波の一種である光の速度でもって電気が伝わるのは至極当然のことなのです。
- 現実では、形式的理解のようなトコロテン式に電子が押し出されて電気が流れ出すのではなく電磁波として導線周辺の空間を光速で伝搬し、その合図にて導線内の電子が一斉に移動するのです。
補足や蛇足など
電子の速度いろいろ
電子の速度(速さ)と言っても実は色々あるようです。例えば、金属中の電子は電圧が掛かっていなかっても、電子はせわしく動きまわっています。この速度はフェルミ速度と呼ばれ光速度の数百分の一程度と結構速いです。上で述べた電子の移動速度というのはこれとは異なり、電子が全体としてある方向に移動する平均速度(流動速度)で、これは先に述べたように(導線内の通常的電流値では)とても小さな速度です。
もっと詳しく知りたい場合は
電気の速さは? - 物理学 - 教えて!goo
電流(電子)の流れる速さは、光速と同じですよね? - Yahoo!知恵袋
EMANの物理学・電磁気学・電磁波のエネルギー(前編)
EMANの物理学・電磁気学・電磁波のエネルギー(後編)