わくわく工作実験 <<

検電瓶(はく検電器)の製作と実験

今回は箔検電器(はく検電器)の自作遊びです。

箔検電器とは

箔検電器(はく検電器、検電瓶)とは、中学?高校?の理科の静電気の授業で出会ったことのあるはずのアレです。静電気の帯電の有無(大きさと正負)を調べる原始的で極めてシンプルな計器です。


はく検電器の製作

材料はこれだけ。

アルミホイル(アルミ箔)とガラス又はプラスチック製の瓶と裸銅線とゴム栓と適当な電極材。
瓶は、見た目を気にしなければペットボトルでも何でもいいのですが、今回は雰囲気を重視し三角フラスコを用いました。

作製はとても簡単。
まずは、肝心部分のアルミ箔短冊を作製。
幅6mm、長さ60mm程度の2枚のアルミ箔短冊を重ねて片端部を細い銅線でぐるぐる巻いて固定。


そして、太い銅線(直径1~2mm)に、ぐるぐる巻いた細い銅線部分にハンダ付けし、ゴム栓中央にあけた穴に差し込んで、もう一方の端部に下写真のように適当な電極材(銅ワッシャなど)をハンダ付けする。

これを三角フラスコに嵌めこんだら出来上がり。
こんな感じ。




実験1・検電瓶の動作確認実験

摩擦で帯電させたプラスチック棒を近づけたり擦ったりする分かったような分からないようなあの実験は静電気の挙動を理解する実験としてはよいのかも知れないが、箔検電器(検電瓶)自体の動作を確認、理解する実験としては煩雑だし定量的ではない。そこで、今回は、極めてシンプルに、電源装置からの直流電圧を箔検電器に直接印加する実験を行う。つまり、検電瓶を静電気帯電確認実験用器具ととらえるのではなく、単一電極の電圧計ととらえて実験を行なうのだ。

今回用いた松定プレシジョン製の高電圧高精度直流安定化電源装置。
この電源装置は正/負両極の0V〜20KVの直流電圧を出力可能で、まずはプラス電圧に設定し、電圧を徐々に上げていく。

印加電圧:1kV印加電圧:2kV


印加電圧:3kV印加電圧:4kV


印加電圧1kVあたりから箔が開き出す。3.5kVを超えると箔が瓶の側面に張り付く。
あたりまえだが電流は全く流れない。
マイナス電圧に設定しても、結果は全く同様だった。

極性によらず結果は同じ。
ちなみにGNDとは直流安定化電源装置のGND端子で、それは建物のGND端子(大地アース)に接続されている。



ちょっと不思議に思うこと

ここで、若干不思議に感じることがある。それは、通常、電気回路で電圧を測定する場合、2つの端子(電極)が必要だ。ところが、この箔検電器(検電瓶)は端子1つだ。それなのに電圧が計測されている(電圧に応じて箔の開く角度が変わる)。これ、何となくちょと不思議に感じてしまう。たぶん、瓶の周囲の雰囲気電位に対する電位が計測されているのだと思うが。で、次の実験2を行なった。




実験2・検電瓶周辺状況を変えるとどうなるの?

検電瓶の周りの状況(電気的雰囲気)を変えるとどうなるの?を確かめる実験です。
印加電圧は全てプラス2KVです。

実験2-1

検電瓶を木製の机に直接置かず厚さ合計50mm程度の絶縁体の上に置く。
結果:箔の開き具合は机に直接置いた時と同じ。



実験2-2

アルミホイルでシールドされたボックスの中に入れて絶縁体の上に検電瓶を設置。
シールド(アルミホイル)はフローティング(何も接続しない)。
結果:箔の開き具合は実験2-1に同じ。



実験2-3

シールド(アルミホイル)をGNDに接続(接地)。
結果:箔の開き具合は実験2-1に同じ。


実験2-4

シールド(アルミホイル)を箔と同じ電位+HV(正極高電圧)に接続。
結果:箔は全く開かない。(試しに電圧を10KVまで上げたが開かない。それ以上は怖いので10KVまで)


実験2-5

シールド(アルミホイル)は電位+HV(正極高電圧)に接続。
検電瓶電極はGNDに接続。
結果:箔の開き具合は実験2-1に同じ。


予想通り、検電瓶を電圧計ととらえた場合、電極(箔)の電位と検電瓶周辺の電位との電位差を計測していることになる。また、普通の住居環境では、周辺はGND雰囲気(ゼロ電位)にほぼ等しいようだ。
このように電圧の挙動としてとらえた場合と、静電気帯電(電荷の移動)による挙動ととらえた場合の理解の整合にちょっとトリッキーなところがあるように思う。




実験3・さらにトリッキーな実験

安定化電源装置を使うと、どうしても高電圧出力の片方がGNDに接続されてしまう。電源装置のGND端子を建物のGND端子に接続しなかったとしても片方がGND雰囲気になる。
例えば電池のような完全なフローティング状態の電圧発生体ならどうなるのか?を確かめたい。

さすがに数KVを発生する電池はないので、コンデンサーを用いて実験した。
手持ちのいちばん高耐圧のコンデンサである1KV耐圧の0.01uFのフィルムコンデンサを用いる。

コンデンサは手では持たず300mmの絶縁棒(発泡スチロール棒)に取り付けて出来るだけ電気的なフローティングを保持させた状態で実験を行なうように注意する。

そして、このコンデンサに1KVをチャージして、その片方の足を検電瓶電極に接触させると・・


コンデンサのプラス端子を検電瓶の電極に接続すると:ちょっと開く
接続を離すと:元に戻る
コンデンサのマイナス端子を検電瓶の電極に接続すると:ちょっと閉じる
接続を離すと:元に戻る
再び
コンデンサのプラス端子を検電瓶の電極に接続すると:ちょっと開く
接続を離すと:元に戻る
コンデンサのマイナス端子を検電瓶の電極に接続すると:ちょっと閉じる
・・・
ひたすら繰り返しても同様。

コンデンサの他方の端子に何もつながっていないのに、端子を接続すると箔が開く。なぜに??
電気回路的常識から考えると奇妙な気がする。
そもその箔が開くという仕事するにはエネルギーが必要。
エネルギーが必要ということは電流が流れているはず。
でもコンデンサの片方は開放なので電流は全く流れない。
うむむ?
しかもコンデンサに電流が流れないので、もしこのコンデンサが理想コンデンサ(自己損失がない)とすると上の繰り返し行為を無限に繰り返しても箔が閉じたり開いたりを繰り返す。このエネルギーはどこから?
うむむむ?
一見、無から発生するフリーエネルギーが用いられているとさえ思えてしまうほど不思議だ。
でも、じっくり考えたら分かった。
このエネルギーの源は・・
それは僕だ。
僕がこの箔を開いたり閉じたりしたエネルギーの源だ。
もっと具体的に言うと、僕の手の力でコンデンサの端子を切り換えた仕事(エネルギー)が源だ。

この一見不思議に思える現象。
この辺が電気回路(電圧や電流)的理解と静電気(電荷移動)的理解との整合不十分(理解不十分)に由来するトリックなのだと思う。

話は少し変わるが、磁石に関しても、よくこれに似た理解不十分から来る不思議さがある。凄い強力な永久磁石が重たい物を力強く引き上げるので永久磁石に凄いエネルギーを秘めていると一見思えるが、磁石には全くエネルギーは無い。高い所に置いている大きな石と同じで、それが落下しない限り何のエネルギーも発生しない。つまり磁束を変化させない限りエネルギーは発生しえない。



補足

今回、台所用のアルミホイルで箔を作りましたが、もっと滑らかで薄いアルミ箔、例えばガムやキャラメルを包んでいるアルミ箔を平らに伸ばしたものを使用した方が、もっと高感度でヒステリシスの少ない検電瓶ができます。



検電器というアンティークな計測器具の手作りと検電器の普通とはちょっと違った実験遊びでした。
何かの参考にでもならば幸いです。
投稿:2010/8/28

 

Best Price by Amazon

このWEBサイトもサクラです。