私的画像館 <<

大型放射光施設Spring-8の見学

播磨科学公園都市にあるSpring-8(スプリングエイト)と呼ばれる世界最大の放射光発生装置(加速器)等の一般公があった。天気もいいし、デートついでにお弁当持参で妻と2人で見学に出かけた。


大型放射光施設Spring-8

とにかく巨大な装置だ。
施設間を巡回バス移動での見学だった。
装置周辺はこんな雰囲気。
(写真をクリックすっると大きな写真が見れます)

Spring-8の敷地面積は東京ディズニーランドのテーマパークエリアの3倍程度あり、その周辺にXFELと呼ばれる巨大なX線自由電子レーザ設備や研究棟やら変電設備が点在している。
正直、生活感の感じられないやや殺風景な町並みだ。
まあ、研究学園都市というのはこんな感じなのだろう。


Spring-8の概略構成図



これがSpring-8のメインである蓄積リングと呼ばれる加速器外周に設置されている実験ハッチ群だ。

加速器(蓄積リング)から出力される放射光をビームライン(現在50本程度稼動中らしい)により各ハッチに送られ色々な解析や研究に用いられる。
自転車が駐輪されてあった。設備内が広いので自転車移動なのだろう。

とあるひとつの実験ハッチ(研究解析ブース)の入り口はこんな感じ。

なんかアカデミックな論文やらが掲載されていたが、内容は僕には理解不能。



電子の発生点から

Spring-8の出発点(電子の生まれるところ)はメインの蓄積リングとは違う建物にあった。

まさに、ここが電子が生まれるところ、電子銃。

電界を与えた真空中で金属(銅)を加熱して電子を取り出す。
ブラウン管の電子銃と同じ原理。


線形加速器。電子銃から飛び出した電子を1GeVまで加速する。


線形加速器の上の階に設置されているクライストロン。

電子レンジのマグネトロンが巨大化したようなもの。
写真では大きさが分からないが人間よりも大きい。これが何個も何個もある。
クライストロンで発生させたマイクロ波は導波管で下の階の線形加速器に送られる。

線形加速器で加速された電子は次段のサイクロトロンで8GeVまで加速する。


そして、キッカーと呼ばれる電磁石で電子ビームを分岐させ最終の蓄積リングへ送る。


サイクロトロンと蓄積リングを結ぶ地下道。




地下道を歩き蓄積リングに戻る

周辺長約1.4Kmの蓄積リングでは安定した放射光出力を得るため電子エネルギと軌道の維持を行なう。

通常の偏向電磁石による放射光出力に加えてアンジュレータ(上右写真)と呼ばれる特殊な磁石群によって電子軌道を無理矢理変化させることにより放射光を得る。

これらの強力な放射光をビームラインと呼ばれる光の通り道を介して各種研究解析ブース(実験ハッチ)に送られるのだ。


ここがSpring-8の中央管理センター。
Spring-8の運転状態は全てここで制御管理されているとのこと。



ちなみに、これが加速器本体への扉。

無茶苦茶にぶ厚い。
加速器が稼動中に発生する放射線を遮蔽するためだ。


加速器とかサイクロトロンとかと聞くと、ふつう、衝突型の加速器を連想する。
限りなく光速にまで加速した陽子同士を衝突させて、質量の根源とか、素粒子やら宇宙発生のメカニズムとかを探るというスイスにある、あの世界最大の衝突型加速器LHCを連想するが、Spring-8は、そういう物理学的ロマンチシズムを求めた加速器とは異なる。あくまでも、強力で安定した放射光を取り出すこと、その放射光による様々な産業の基礎研究や開発が目的の加速器だ。思っていたより、ずっと身近で現実的な加速器なのだと分かった。



X線自由電子レーザーKFEL施設(現未完成建設途中:2010年4月時点)

レーザーと放射光の優れた特性を併せ持つ人類の英知が創り出した夢の光、X線自由電子レーザーを発生させる巨大装置。上のSpring-8と違う点は、極めて高ピークで短時間のインパルス出力であることと、コヒーレントであること。







日本初の放射光発生用サイクロトロン SOR-Ring

放射光普及棟の歴史体験ゾーンに世界で最初に建設(1974年完成)された放射光専用の電子蓄積リングが展示されてある。これは東京大学物性研究所で使われていたものとのこと。


基本的な構造は現在のものとは変わらないように思う。


 

Best Price by Amazon

このWEBサイトもサクラです。