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Musical Fidelity A1というプリメインアンプ

これが今も愛用中のアンプ

英国Musical Fidelity(ミュージカルフィデリティ)というメーカーのA1という名のプリメインアンプ。
Musical Fidelity A1の写真

創業者(元音楽家)が、電気信号を忠実に増幅するのではなく、音楽を再現することを理念に自ら
開発設計したアンプらしい。今となれば、かなり古いアンプ。でも、その卓越したデザイン性と、醸し出す音の雰囲気には色あせない何かがあるように思います。もちろん、大昔に製造中止なっていて新品入手は不可能ですが、Yahoo!オークションなどに中古品が時々出品されているようです。もしかしたら、程度の良いモノが結構安く入手出来るかも知れません。ご興味あらばYahoo!オークション内で検索してみたください。


僕が感じるこのアンプの魅力

僕がこのアンプを気に入っている大きな理由の1つは、このデザイン(見た目)のクールさ。
もう随分昔の製品なのですが、今でもその洗練された美しさには卓越したものを感じてしまうのです。

次に、その音です。決して今時の広帯域高速アンプのような迫り来る情報量の多さと精密さという感じはしないのですが、独特の繋がりの良さ、滑らかさと心地良さを感じます。特にバイオリンなどの弦楽器ではその良さが際立ちます。それと、低出力なんですけど、不思議な量感のある音です。人によっては、よく三極管アンプの音に近いと評されているようですが、三極管アンプの音ってどんなのかを理解していない僕にはよく分かりませんが、でも、このアンプの魅力にはまると、なかなか他の最新アンプに替える気はしないのは事実です。


このアンプの主な特徴は

●パワーアンプ(出力アンプ)はコンプリメンタリのバイポーラトランジスタにより構成されA級動作である。
●パワーアンプ(出力アンプ)部はNonNFBとなっている。従って高調波歪み率は0.3〜0.5%程度ある。
●原理的にクロスオーバー歪みは無く、かつ、NFBのもつ悪癖も無いピュアな音を実現する。
●出力は20W+20W。
●A級動作(A級バイアス設定)が故に発熱量は無茶大きい(音量によらず常に75W程度の発熱)。
●筐体の上部パネル全てがヒートシンク(アルミ材)となっている。
●回路構成は極めてシンプル。出力に遮断リレーは無くダイレクト。もちろんミューティング回路も無い。
簡単に言うと、発熱や信頼性低下を覚悟の上、音楽性を重視するため負帰還を廃したA級動作としたアンプ。


このアンプのマニュアル(取り扱い説明書)

MusicalFidelityA1 INSTALLATION GUID(PDFファイル)
(上記リンクを右クリックして「対象を保存」とすればPCにダウンロード保存できます)

分解してみると・・中身はこんな感じ

Musical Fidelity A1の分解写真Musical Fidelity A1の出力トランジスタ
Musical Fidelity A1のプリントパターンMusical Fidelity A1のトロイダルトランス

分解および組立ての注意点

分解での注意事項はシリコングリスでくっ付いた上面パネル(ヒートシンク)を取り外す作業。
隙間にマイナスドライバを差し込んでテコの原理ではがすのがコツ。
組立てでの注意事項は、古いシリコングリスを全て除去し、新しいシリコングリスを満遍なく適量を塗布する。
そして、ヒートシンク結合ネジは1つず強く締め付けるのではなく全部のネジをバランスよく締め付けることです。
パワートランジスタASSYとヒートシンク(アルミパネル)との密着な熱的結合が大切なのです。


構成上の特徴は

●電源トランスに大型トロイダルトランスを使用。
●出力トランジスタはメタルキャンタイプのバイポーラトランジスタを使用。それには特殊型名が印字されているが、どうやら(かの有名な)2N3055とMJ2955のコンプリメンタリペアの選別品らしい(Musical Fidelityからの正式なコメントは無い)。
●1枚基板で構成。電源トランスを除く電源回路、プリアンプ回路、パワーアンプ回路の全てが1枚の基板上に形成されている。
●電源回路の電解コンデンサ(平滑用コンデンサ)は25WV耐圧の10,000uFで85℃耐熱品であり、プラスおよびマイナス電源に、それぞれ2個用いている。また1個目のコンデンサと2個目のコンデンサとの間に0.47Ωの抵抗器が挿入されている。
●パワーアンプに印加される電源電圧は±24Vである。
●プリアンプ(ラインアンプ)部は基本的にはOpアンプにより構成されている。
●PHONOイコライザアンプ部は入力部でトランジスタ1段増幅回路+Opアンプ回により構成。
●回路パターン引き回しが個性的。ちょっと理解に苦しむ箇所もある。ノウハウなのか?



このアンプの設計マージンはかなり小さいぞ・・特に温度マージンが

ちょっと驚きなのはA級動作の常に高温になるアンプに85℃耐熱のコンデンサーを用いていること。
あまりにもマージンが少なすぎる。ついでに耐電圧もぎりぎりの設計だ。
日本製の家電製品では、まず考えられないマージンの少なさです。



ということでヒートシンク部の温度を測定しました

下写真のように上面パネル(ヒートシンク)に温度センサ(熱電対)を取り付けて温度を測定。

元々の状態(変更なし)とヒートシンクの塗装を全て完全に剥離し高熱放射シリコン塗装に改造
した状態と、さらに冷却ファン(PC用の低騒音タイプ)2機をヒートシンクの上にゴム足で1cmほど
浮かせて設置してファンを運転(風向は下向き)した状態の合わせて3種類を測定。


測定結果

これが測定結果を温度上昇値に換算(測定温度−初期温度)したグラフ。

元々の状態場合、37℃程度まで温度が上昇する。これは例えば夏場の気温35℃の時には
35+37=72℃まで上昇するということ。かなり熱い。殆ど触れない温度です。これはヒートシンク
の外での測定温度であり、内部は更に数℃高い可能性がある。

しかし、これで85℃耐熱の電解コンデンサーを使うというのは、驚きの設計です。
コンデンサーが破損しないまでも劣化スピードはかなり加速されると思われます。

ファンを運転した場合、温度上昇が16℃程度に抑えられています。
(ファン無しに比べると20℃程度の低下)
やはりファン(強制空冷)の効果は抜群です。


このアンプを長く愛用しようと思うなら冷却ファンはMUSTかも

一般的に、温度が高くなると寿命が指数関数的に短く(つまり故障率が飛躍的に高く)なります。
これはアレニウスの法則に従い、概ね温度が10℃上昇で寿命が2倍短く(故障率が2倍に)なる
と言われています。

つまり、暑い中、このアンプで音楽を聴いていると、壊れないまでも、どんどん劣化して行っていると
考えると、熱々になっているアンプのことばかり気になり音楽を楽しむどころではありません。
これは精神衛生上まったく良くありません。
だから冷却は必項なのです。

ということで、こんな感じにファンを取り付けています。というかファンにゴム足を付けて置いています。
ゴム足等で隙間を開けるのがミソです。もちろん風をヒートシンクにたたきつける方向(下向きの風)です。

ファンはPC用超静音タイプ(回転数:1000rpm、騒音レベル:17dB、磁気浮上式ベアリング採用)


補足です

PC用ファンはDC(直流)12Vで動作します(一部DC5Vタイプもあります)。よって、コンセント(AC100V)では、そのまま使用できません。AC100VをDC12Vに変換するコンバーター(電源器)が必要です。現実的には、DC12V程度(9〜14V)の出力のいわゆるACアダプターを使用するのが最も簡単だと思います。僕の場合は、使わなくなった古いルーターのACアダプターを流用しました。モデムやルーターやイーサネットハブやコードレス電話などがDC12VのACアダプターが使われている場合が多いようです。

ファンを駆動するACアダプターとダイソーで購入したスイッチ付きコンセント。



改造案(計画)

●ヒートシンク部塗装を高熱放射シリコン系塗料に変更(改造完了)
●電源の電解コンデンサ(ケミコン)の変更。
 できれば105℃耐熱品で低ESRのコンデンサを探し中。大きさ(形)の制限(D=Φ30 H=30)がネック。
●整流ダイオードをショトキーダイオードへの変更。
●主要カップリングコンデンサを高品位フィルムコンデンサへの変更。



おまけ・このアンプを中心とした僕のシンプルオーディオセット





<関連情報サイト>
Musical Fidelity A1 - Products(A1のユーザーは必見です)
Musical Fidelity HomePage(今現在、A1に関するアーカイブは削除されています)

投稿:2007/11/25
補足追記:2008/8/28

 

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