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霜取りタイマーの分解と冷蔵庫の修理


なにゆえ霜取りタイマー(除霜タイマー)というマイナーで地味な部品を分解するに至ったのか?というと・・

冷蔵庫が冷えなくなった

妻が「最近、冷蔵庫が冷えてないみたいなの」と言い出した。で、冷蔵室の温度を測ってみると、なんと、20℃近くある。これでは、ぜんぜん冷蔵庫として機能しない。つまり、僕の大好きなビール(正確に言うと発泡酒)も冷えない。これは大変なことだ。でも、幸い冷凍室(フリーザー)は何とか氷点下を維持しているので、圧縮機(コンプレッサー)は機能している。冷気がうまく冷蔵室まで届いていない可能性が高い。うちにあるような旧式の普及型(安価な)冷蔵庫は冷凍室(フリーザー)内のファンで冷気を分配送風しているタイプが多い。そこで、冷凍室を分解してみた。

(左写真)冷凍室(フリーザー)の奥面 (右写真)奥面のカバーを取り外した

ファン(小さな扇風機)は問題無く元気に回っている。
さらに内側にあるカバー(セパレーターボード)も取り外した。

冷却フィン(エバポレータ/気化器)が露呈した。これを見ると、冷えない理由が直ぐ分かった。
凍結して氷の塊となってエバポレータに付着している。これでは冷風が流れない。(左写真)
とりあえずヘアードライヤーで温めて解凍。(右写真)

冷蔵庫が冷えなくなった直接的原因は分かったが、その大元の原因があるはず。エバポレータにこれだけ氷が固まり付く原因は、霜取りが上手く行なわれなかったことにある。そこで、まず最初に疑ったのは古くなりボトボロになっている扉のパッキンだ。パッキンが不完全なため庫内に過剰な湿気が入り、霜取り時間では解凍しきれなくなり、結果、エバポレータには凍りが残り、庫内が目標温度まで低下しないため、圧縮機は常に動作状態となり、エバポレータにはさらに氷が成長するという悪循環モードに陥ったと推測した。


冷蔵庫のドアパッキンの交換

そこで、パッキンを近所の電気店(ミドリ電化)に取り寄せてもらい、交換した。価格は5千円程度だった。冷蔵庫のパッキンの交換って、網戸の網の交換よりもずっと簡単だった。冷蔵庫も元通り冷えが戻り、うまっく行ったように思えた。2週間ぐらいまでは・・

(左写真)新パッキン(と好奇心旺盛のうちの猫)
(右写真)パッキン取り付けの様子。隙間に押し込むだけ。


ところが・・

また冷えなくなった。
冷えて喜んだのもつかの間だった。2週間ぐらい経った頃、なんだかまた冷えが甘くなってきた。で、また冷凍室の奥のエバポレータ室を開けてみると、なた霜氷が付着している。
どうやら、これは、霜取り機能そのものに問題がありそうだ。

そこで・・

再度徹底的に冷蔵庫を分解し霜取り機能部分を詳細にチェックすることにした。


家庭用冷蔵庫の霜取りの仕組み

冷蔵庫の霜取りとは・・

空気を冷却しようとすると、必ず冷却部分(エバポレータ)に水滴が付く(空気中の水分が結露する)。温度が氷点下の場合は、それが霜(氷)となりエバポレータに付着する。特に家庭用の冷蔵庫のように始終開け閉めをする場合は、湿気がどうしても庫内に入り、霜が付き易い。これは冷蔵庫の宿命だ。

そこで、どうしているかと言うと、知らず知らずの間に、冷蔵庫は自動的に霜を溶かしている。もう少し具体的には、一時的な短い時間に圧縮機の動作を休止させ、冷却部分(エバポレータ)の下部に設置している電気ヒーターを加熱させエバポレータに付着した霜を解かす。この動作を人知れず周期的に繰り返しているのだ。(別の方式もあるが、多くの家庭用冷蔵庫はこの方式)

うちの冷蔵庫の場合

うちの冷蔵庫(15年前の型)の配線図。


霜取り機能に関係する主な部品は、霜取りヒータ(ガラス管ヒータ)、除霜サーモスタット、温度ヒューズ、それと、霜取タイマーだ。

(左写真)霜取りヒータ(エバポレータの下にある。約140W)
(右写真)除霜サーモスタット(冷凍室の奥のファン近くにある)


(左写真)温度ヒューズ(冷凍室の奥面のセパレーターボード裏側にあった)(*1)
(右写真)霜取りタイマー(冷蔵庫裏側上部の配電ボックス内にある)

各部品のチェックだ。霜取りヒータは抵抗値測定、除霜サーモスタット、温度ヒューズは導通チェック(除霜サーモスタットは冷却時にONになる)を行なったが全く問題なし。各関連ハーネス、コネクター類もOK。
残るは霜取タイマーだ。

(*1)温度フューズ:
一定温度(65℃)以上になると遮断するヒューズ。何故、冷凍室に65℃の温度ヒューズが必要なの?と思うかもしれないが、これは霜取りヒータの異常過熱時に遮断するためのもの。うちの冷蔵庫では、通常時間にロックしてしまったが、もし霜取り時間にロックする故障であったら、冷蔵庫は全く冷えず、また霜取りヒータの過熱により、この温度ヒューズが遮断していたのだと思う。


霜取タイマーとは

霜取タイマーは霜取り間隔と霜取り実施時間を計測し、それに応じて圧縮機(コンプレッサ)を遮断し、霜取りヒータを動作させるコントローラーだ(上記配線図のオレンジ色線囲み部分)。つまり時間によって内部状態を変化させるものなので、簡単には動作チェックが出来ない。よって、これを取り外して単体として動作チェックをすることにした。

(左写真)霜取りタイマーを取り外す。
(右写真)霜取りタイマーに通電し動作チェック。

この霜取りタイマー、メカニカル(機械式)タイマーのようだ。通電すると微かにモーターの回転音がする。時間経過により接点が切り替わるかチェックした。結果・・いくら時間をおいても接点が霜取りヒータ側に切り替わらない。これでは永遠に霜取りが実施されない。明らかにこの部品が原因のようだ。


補足

今時の冷蔵庫では、多くの場合、MPU(マイクロプロセッサ)により統合的制御しているので、こんな個別の霜取りタイマーなどは無く、MPU内のS/W(プログラム)として、この機能を実施していると思う。たぶん。


霜取りタイマーを分解するぞ!

メカニカル式は目で見て動作が分かるので分解が楽しみだ。
ネジを外す時に無性にわくわくする。

霜取りタイマーはACモーターとギアボックス部から成る。
さらにギアボックスを分解する。

ギアボックス部には7個の減速歯車と接点切り替えカムと3枚の接点電極板から構成される。
接点切り替えカムにはクラッチ機能があり、外部からドライバで強制的に接点状態(時間)を変更できるように考えられているようだ。(→おまけ2参照)

分解すると、この冷蔵庫の不具合の根本原因が分かった。
第1歯車(モータに一番近い歯車、つまり最も高速で回転している歯車)の歯欠けが原因だ。

この小さな歯車の歯欠けによりモータの回転がギアボックスに伝わらず、接点は圧縮機側にずっと固定されていたわけだ。やっと納得できる原因までつきとめることが出来て、とても嬉しい。至福の一時だ。


おまけ

接点切り替えカム(黒色の巻貝みたいなやつ)と接点の切り替えの様子。
見易いように歯車は全て取り除いた写真。

(左写真)通常運転時(圧縮機動作)
(右写真)霜取り実施時(圧縮機を停止させヒータを加熱)


おまけ2


このヘソのようなのが、外部から接点状態(時間)をドライバで変更(調整)するためのもの。
出荷時とか、電気屋さんが点検するときに使うのだろうか?写真では分かり難いが、片方にしか回せない(逆に回そうとすると滑る)仕組みになっていたりして芸が細かい。



新霜取りタイマーを入手そして冷蔵庫は完全復活!

歯車を直すのは困難(無理矢理に直したとしても耐久性がない)なので
霜取りタイマー(補修部品)の値段を調べることにした。
いつもの電気店で聞いてみると、2千数百円程度だとのこと。
予想外に安いやんけ、霜取りタイマー!
パッキンよりもずっと安いぞ!

何故か電気店では修理用専門部品を部品として個別に取り寄せることは店の方針で、出来ないということなので、シャープのサービスセンターに直接お願いした。

コネクタ式なので取替えはとっても簡単。
そして・・冷蔵庫は完全復活!
今でも元気で現役活躍中!
めでたしめでたし。



補足

何人かの方からお問合せ頂きましたので追記しておきます。
(参考データ)
冷蔵庫の型名:シャープ SJ32VG
霜取りタイマーの型名:サンキョー TMDFX03FA2
シャープのサービスセンターからの購入価格:2730円

ご注意

霜取りタイマーは各メーカーの各品に応じてカスタマナイズされています。
外観や端子形状が同じであっても、他のメーカーや他の型名の冷蔵庫に適合するとは限りません。
ご注意ください。

また、このページに記載の内容は、あくまでも趣味レベルのことです。
ご参考頂くのは光栄ですが、分解や修理や改造は、どうぞご自身の責任に基づいてお楽しみください。


<参考サイト>
冷蔵庫 - Wikipedia
日本電産サンキョー株式会社-霜取りタイマー製造メーカ


投稿:2008/5/1
一部修正:2008/5/29
補足追記:2008/8/26
補足追記:2008/11/21

 

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