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井出治氏の超効率インバーター「デゴイチ」に関する調査と考察

 

すでに効率400%を叩き出すフリーエネルギーマシーンが完成している?!

 

フリーエネルギー研究家・クリーンエネルギー研究所所長 井出治さん

テスラコイルの実験動画をYouTubeで探していたら、下記(左側)の動画が目にとまり、見て(聞いて)びっくり!信じ難い出来事を淡々と語る井出治さん。更にびっくりしたことに効率400%近くを達成したインバータ装置が出来上がっているとのこと。これは、つまり、直ぐにでも永久機関が出来てしまうということ。人柄も良さそうな方だし、米国の権威ある物理学会やNASAでも研究発表されたとのこと。全くのデタラメでは無さそうです。これ、おもしろ過ぎるので少し深堀りしようと思います。

 

 

左側ビデオは1時間と長いので、時間がない時は、とりあえず右側の10分ビデオをご覧ください。

下記サイト環境エネルギー振興財団に井出治氏のプロフィールがあります。

 

 

著書『フリーエネルギー、UFO、第3起電力で世界は大激変する』

で、さっそく井出治氏の著書『フリーエネルギー、UFO、第3起電力で世界は大激変する ~永久機関の原理がすでに見つかっていた~』と言う、かなり胡散臭そうなタイトルだけど、この本をamazonで購入しました。

 

読んだ感想

読んだ感想ですが、凄い面白かったです。ヒカルランドの「超☆わくわくシリーズ」だけのことあって、わくわくしながら読み進めることが出来ました。本を長時間読むのが不得意な僕でも一晩で読み終えました。冒頭の船井幸雄氏と著者の対談から既に内容充実で面白いです。フリーエネルギーの実現をよしとしない陰の巨大権力の話、UFOの話、EMAモーター米国見学訪問、テレポーテーション体験、米国学会発表、学会発表を聴きに来ていた宇宙人達、謎の予言者(宇宙人)からの数々のアドバイスなどなど、著者の体験や不思議な出会いやこれまでの苦労や思いがリアルに率直に書かれています。テレポーテーションや宇宙人の話など普通は到底信じ難い話ですが、著者の素朴な人柄が妙に伝わって来て、不思議と納得してしまいます。

 

この本のメインテーマ

このように読み物としても十分面白いのですが、この本のメインテーマは、なんと言っても、著者の30年を超えるフリーエネルギー研究開発の成果とも言える『デゴイチ』と名づけられた超効率インバータです。ちなみにインバータとは電気の種類を直流から交流に変換する装置のことです。ここで重要なのはインバータではなく超効率(Over Unity)ということです。これは変換効率が100%を超えたということであり、物理学(熱力学)の根本原理であるエネルギー保存法則を打破したいう意味です。著者は400%近くを実現したとも書いています。これが、もし、本当なら、出力エネルギー(の一部)を入力に戻してやれば、無限の変換効率が得られることになり、この仕組を増殖させれば、つまるところ、どこででも、ゼロから無限のエネルギーを生成可能ということです。これは、電気代がタダになるというセコイことだけでなく、世の中の経済システム、支配システムの革新、大きな価値体系の革新(パラダイムシフト)を意味しています。もし、これが本当なら、たぶん今世紀最大の技術革新&社会革新となると思います。原発や風力発電や太陽電池とか、そんなことやっている場合ではないのです。なんせ、ゼロから無限のエネルギーを取り出すことが出来るのですから。

 

 

コンテンツ(ページ内リンク)

 

 

超高効率インバータ『デゴイチ』は本物か?

上記のような夢のようなことが本当に実現できるのでしょうか?ここでは出来るだけ偏見なく、できるだけ素直な気持ちで、超高効率インバータの原理や動作を考察して行こうと思います。

 

上記著書の本文には、超高効率インバータ『デゴイチ』の開発経緯等は書かれていますが、技術的詳細は書かれていません。でも、有難いことに「巻末資料編」としてp.280〜310に、著者が米メリーランド州立大学でのSPESIFにおける発表論文の転載がありました。本当にありがたいことです。これを読みましたら、幾つかの大きな疑問点が出てきましたが、それに関しては後述したいと思います。

 

この論文の要約

 

構成と動作条件

(1)トランスとMOSFETによるスイッチング回路を用いたシンプルなインバータ回路。

(2)鋭いパルス電流をトランスに入力つまり上記MOSFETのオン時間は極めて小さくして直流成分を殆ど無くす。

(3)同じ磁極が対向する反発磁場を用いたトランスを用いる。(通常のトランスよりもより出力が上がる)

(4)繰り返し周期を短くすると出力を増大することが出来る。

 

結果

(1)上記のよう鋭いパルス(スパイク波)を用いた方が通常の矩形波を用いたインバータよりも高効率となる。

(2)反発磁場を用いたトランスを用いる方が通常のトランスより高効率となる。

(3)駆動パルスの繰り返し周期を短くする方が高効率となる。

 

ポイント

トランスへの入力として鋭いパルス状のスパイク電流を利用し、かつ、その時に回路内に起きる過渡的な現象を有効に利用する。この2つの特徴を組み合わせて利用することによって、『正の起電力』によって駆動される新しいタイプの高効率インバーターの開発に成功した。

ここで言う『正の起電力(第3起電力):共に著者の造語』とは、ファラデーの電磁誘導の法則から導かれる「逆起電力」とは全く異なる性質のもので、その大きさは、磁束の変化の速さに左右され、2次及び更に高次の磁束の時間微分が関与している。

 

上記が、著者の論文の概要である。要するに簡単に言うと、スイッチング回路のON時間を極端に短くして急峻にして、そしてoff時に発生するリンギング(電圧過渡振動)を利用すると、飛躍的に効率がUPする。さらにはトランスに工夫(反発磁場を用いたトランス)を施すと更にいいよ。というお話です。

 

 

超高効率インバータ『デゴイチ』に関する2つの特許

この超高効率インバータ『デゴイチ』に関する下記の2つの特許が公開されています。

 

これが超高効率インバータ『デゴイチ』の基本特許(現未登録)−特開2012-023898

【要約】
【課題】効率の良いインバータ駆動方式を提供する。
【解決手段】トランスの一次側駆動パルスとして、パルス幅がごく短いパルスを供給すると共に、その一次側駆動パルスの時間間隔を縮めることによって、過渡現象によるトランスの二次側の出力電圧を、入力の電源電圧を一定に保ったまま、数倍に大きくすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 トランスを有する発振回路を用いたインバータを駆動するインバータ駆動方式であって、
入力波形が飽和するよりも短い期間のパルス状の一次側電流を、トランスに供給することを特徴とするインバータ駆動方式。
【請求項2】 前記トランスに供給するパルス状の一次側電流を、間欠的に供給することを特徴とする請求項1記載のインバータ駆動方式。
【請求項3】 前記トランスに供給するパルス状の一次側電流は、あるタイミングで供給した前記パルス状の一次側電流が終了した後に前記トランスの二次側に現れる過渡現象による出力電圧が零になる前のタイミングで、次のパルス状の一次側電流を供給するように、間欠的に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のインバータ駆動方式。

【発明の効果】
本発明のインバータ駆動方式によれば、効率よくインバータを駆動することができるという効果を得る。

 

インバータ駆動回路

本発明の基本的構成

 

 

上記インバータ駆動回路の動作波形

(a)MOSトランジスタ33のスイッチング駆動波形 

(b)トランス32の一次側巻線に生じる入力電流波形

(c)トランス32の二次側巻線に生じる出力電圧波形

 

 

 

駆動パルス時間間隔を縮めた場合の動作波形

(a)MOSトランジスタ33のスイッチング駆動波形

(b)トランス32の二次側巻線に生じる出力電圧波形

この特開全文はこちら。

(現時点では審査請求されていません)

 

反発磁場を用いたトランスに関する特許(現未登録)−特開2012-039074

【要約】
【課題】一次側入力に対応して二次側出力に出力される電力を、従来よりも効率よく出力することができるトランスを提供することを目的とする。
【解決手段】2以上のコア、及び上記コアに巻回される一次側コイル及び二次側コイルを備えたトランスであって、上記コア及び上記一次側コイル又は二次側コイルにより形成される2以上の磁気回路が互いに反発する磁力線を生じさせる組を有すると共に、上記磁気回路が互いに反発する磁力線を生じさせる組をなすコアは、少なくとも1以上のギャップを隔てて配設した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2以上のコア、及び前記コアに巻回される一次側コイル及び二次側コイルを備えたトランスであって、
前記コア及び前記一次側コイル又は二次側コイルにより形成される2以上の磁気回路が互いに反発する磁力線を生じさせる組を有すると共に、前記磁気回路が互 いに反発する磁力線を生じさせる組をなすコアは、少なくとも1以上のギャップを隔てて配設されることを特徴とするトランス。
【請求項2】 前記一次側コイルへの電源の供給をオフからオン又はオンからオフに切り替えた直後に前記二次側コイルに生じる電力を外部へ引き出すことを特徴とする請求項1記載のトランス。

【発明の効果】
以上のようなこの発明のトランスによれば、対向する反発磁場により、それぞれのコイルが対向するコイルに「レンツの法則」によって発生させる起電力が、対 向するコイルの電流を加速させることにより、対向するコイルの電流を増大させるので、出力電力をより効率よく取り出すことができるという効果を得る。

 

動作原理図(左が直列接続、右が並列接続)

実施例の図

この特開全文はこちら。

(現時点では審査請求されていません)

 

 

考察と疑問点

以下は、超効率インバータ『デゴイチ』に関する僕の個人的な考察と疑問点です。

 

駆動パルス幅を極端に短くすることの意味

著者は論文及び特許の中で「トランスの一次側駆動電流を、極力短い時間だけ流すこと、すなわち、立ち上り立ち下がりが急峻で、なおかつ、入力波形が飽和するよりも短い期間のパルス状(パルス幅が極力狭いスパイク状)の電流、すなわち、鋭い三角波の信号で駆動することが特徴の一つである」(特開2012-023898のp.4の8〜12行)

と述べている。またその理由として「ファラデーの法則によれば、トランスの二次側出力電圧として有効であるのは、トランスの磁束の時間変化率、すなわち、一次側の入力電流の時間変化率のみで あり、電流が流れた時間の大きさは関係ない。つまり、平坦な直流に近い入力電流は、いくら大きく、時間が長く流れても、出力電圧には影響しない」(特開2012-023898のp.4の15〜18行)また「直流成分の多い(トランスへの)入力電流は、高い値の交流出力電圧を発生させるには、最も不利である。この観点から見れば、直流成分の多い方形波に近い電圧で駆動されるロイヤー回路は明らかに非効率である。直流成分を究極的に小さくした理想的な駆動波形はスパイク波である」

著書(ヒカルランドの『フリーエネルギー〜』)の巻末資料p.288の冒頭部分より。

上記のような記述を見ると、どうも、スイッチングインバータの根本的部分の理解に誤りがあるよう思います。インバータのスイッチングの平坦な部分、つまりスイッチング素子のON時間は、一見静止的に見えますが、コイルに流れる電流は増加しています。つまり、その間にコア内の磁束を増加させています。また、コアの飽和を避けるために一瞬でON時間を終了するというのはおかしいです。そんなに直ぐにコアが飽和していまうようなインバータは、そもそも設計不良です。インバータは、このON時間にコアに磁束としてエネルーギを蓄えているのです。コアにエネルギーを蓄えない限り、インバータにおけるコイル(トランス)としての機能を果たしません。つまり、直流成分の多い方形波(ある程度のON時間のあるパルス)で駆動すると言うのは、単なる損失(ロス)であるという著者が理解されているような無駄な行為ではなく、スイッチングインバータとしての大切な行いなのです。また、逆な言い方をしますと、究極的に短いスパイク波でインバータを駆動したとしましたなら、それは、エネルギー伝達が出来ない、つまりパワーの出ないインバータとなります(過渡的なリンギング電圧は発生するかも知れませんが、電流を殆ど流せません)。

 

第3起電力(正の起電力)て何?

著者のアイデアの中核を成す、この第3起電力(正の起電力)に関してですが、下記のような説明がされています。

「トランスの一次側入力電流の変化が、時間の二次微分値以上に及ぶような、急峻な変化を伴う場合、ファラデーの起電力を超えた正の起電力(positive EMF)が発生することを示している。この正の起電力(positive EMF)は、入力電流と同方向、すなわち、電流を増大させるため、ファラデーの法則に従った起電力以上の出力起電力が発生することを期待することができる」(特開2012-023898のp.6の26〜28行)より。

また著書巻末資料(論文)の中より「発生した磁場が特殊な位相を構成する場合のみ、正の起電力が誘起される」や「正の起電力は、特殊な反発磁場を用いたトランス以外でも、どんな種類や設計や条件のコイルの中でも一般的に発生している」「正の起電力は磁束の時間による2次微分か、それ以上の高次の時間微分の関数である」とか「正の起電力は、ファラッデーの起電力の成分とは完全に独立した非線形の成分を反映した起電力である」等の記述があります。これらの記述と論文や特許中の波形を見ると、インダクタ(コイル)をスイッチングしたときに生じる所謂リンギング(振動電圧波形)のことであり、それに上記のような種々な意味付けをしているように思います。僕の理解では、リンギングはスイッチング時(特にOFFになった過渡期)に発生する電圧振動で、コイルのインダクタンスとコイルの線間容量やコイル線とコアの間の容量やその他浮遊容との間で生じる共振振動で、たしかに、不確定要因が多くて定量的に理解するのは困難ですが、どう考えても単なるLCR減衰振動現象に過ぎないように思えます。また、これは電圧振動(また電流の振動は小さく電圧とは位相が異なる)ですので、エネルギーとしては電力変換の主役になる程には大きくはならないはずです。そのリンギング現象に、それ以上の意味を付加する意味が僕には理解できません。しかし、もしかしたら、頭で考えているだけでは分からなくて、実際に実験すると、何か未知の現象に気づくかも知れませんので、後ほど検証実験予定です。

 

反発磁場型トランス

構造は2つの磁気回路がギャップを介して反発する方向に配設されたトランスで「この発明のトランスによれば、対向する反発磁場により、それぞれのコイルが対向するコイルに「レンツの法則」によって発生させる起電力が、対向するコイルの電流を加速させることにより、対向するコイルの電流を増大させるので、出力電力をより効率よく取り出すことができるという効果を得る」(特開2012-039074のp.3の23〜26行)と記述されています。通常このような構成をすると磁束の何割かは打ち消し合ってインダクタンスが低下します。電流を加速?ってどういう意味なのでしょう?インダクタンスが低下すると、著者が書かれているように電流の変化が速くなり、もしかしたら、そのことを電流が加速すると表現されたのでしょうか。それなら、こんなに大袈裟なことをしなくとも、コイルの巻き数を減らす、または、AL値の低いコア材に変更するということでいいような気がします。反発磁極が向かい合うギャップあたりに、何か、もっと深い特別な意味があるのかも知れません。これも、後ほど検証実験予定です。

 

電力測定手法

実は、これが、僕の最も大きな疑問です。著者は何故、出力電力の測定を交流信号のまま測定したのだろう?という疑問です。入力は直流ですから、入力電力の計測は簡単です。適当なマルチメーターで電圧と電流を測定して掛け算をすれば簡単に電力が出てきます。ところが、出力は急峻なスイッチングによる高周波成分を多く含んだ電力ですから、その計測は結構大変です。著者はYOKOGAWAのパワーアナライザーを用いて計測されているようですが、プローブ容量の影響や、電流を計測するためのシャント抵抗器のインダクタンスの影響、GNDラインに生じるノイズの影響等を受けるので、正確にパワーを計測するのは難しいように思います(特にシャント抵抗器のインダクタンスの影響は場合によってはとても厄介です)。

最もシンプルで確実な電力計測手法は、交流出力をダイード(FRDなど)で整流して、適当なコンデンサで平滑して完全な直流に変換してから負荷を接続して電力を測定する方法です。入力も出力も直流なので、測定手法としても美しいと思います。それに、それが出来れば、その直流電力を入力にフィードバックすれば、永久機関の出来上がりな訳です。どうして、出力を直流に変換して電力を測定しないのでしょうか?大きな疑問です。

またついでに書くと、別の方法としては、出力電力を交流のまま熱量計測用負荷抵抗で消費させて熱量を計測して出力電力を算出する手法もあります。機材さえあれば、結構簡単に正確に計測できます。

 

僕の正直な感想を書きますと、上記のような理由により、パワーアナライザーを用いて無理やり計測した電力、つまり、たんに計測の都合で見えてしまった電力で変換効率等を評価して、超効率だとかを結論付けても、それは残念ながら、あまり意味が無いように思います。実際に使える形の実体的な出力パワー、エネルギーで評価、判定すべきではないかと思います。

 

そもそも実用出来る電力には変換出来ない?

上で述べましたように交流パルスを整流平滑して直流に変換する手法が電力変換効率評価手法として最もシンプルであり的確であるのと同時に実用出来る電気エネルギー形態に変換できる手法でもあります。また、直流に変換できれば、その出力電力の一部を入力にフィードバックすれば永久発電(永久機関)の出来上がりです。では著者は何故、直流に変換して変換効率を論じないのか?・・それは直流に変換すると、その超効率特性が全く出て来なくなるからです。なぜ出て来なくなってしまうのか?・・それは、超効率特性がとても神秘的でデリケートな次元から流入する未知のエネルギーに起因するからでしょうか?いや、残念ながら違います。それは、もともと無いからです。超効率特性の実体はないのです。つまり上の電力測定手法に関する疑問点で書きましたように超効率特性は単に測定手法の都合で見えてしまったものを何かしら神秘的な意味有り気なものと思い込んでしまっただけなのです。

 

ここで書きましたことは、全く僕の勝手な考察であり、疑問点であり、僕の限られた知識範囲からの見解でしかありません。だから、僕が大間違いや大勘違いをしている可能性も多々あります。ご了承およびご注意ください。また、その時は、どうぞご容赦ください。

投稿:2012/6/7

 

 

 

検証実験開始

既存の知識ベースでもって、頭で考えただけでは、もしかしたら、何か、見えない現象もあるのかも知れないので、実際に実験をやってみます。でわでわ、基本的な実験を開始します。

 

まずは反発磁場型トランスというやつ

シンプルにするため反発磁場型コイルで検証実験します。下写真のように2つのコイルを直列接続し、約1mmのギャップを挟んで磁力が反発する向きで結合させる。電磁気学的には、たんに、一部の磁束が打ち消され、2つのコイルのインダクタンス加算値から相互インダクタンス分のインダクタンスが差引されるだけです。何か、それ以外の奇妙な特性が現れるのでしょうか?

 

まずはこの反発磁場型コイルのインピーダンスを測定

2つのコイルを直列接続しただけの状態(上写真左)で測定。

緑色グラフはインピーダンスの大きさ(0dB=1Ω)で青色グラフは位相。

下の黄色グラフはインダクタンス値。

もちろん普通のコイルとしての特性です。200KHzで約32μHです。

 

いよいよ本題の反発磁場型コイルのインピーダンスを測定します。上下のコイルの磁力を打ち消す方向に接続した2つのコイルを上写真右のように1mm厚のポリプロピレンシートを挟み込み上下に積み重ねます。これで、反発磁場型コイルが出来上がりです。

緑色グラフはインピーダンスの大きさ(0dB=1Ω)で青色グラフは位相。

下の黄色グラフはインダクタンス値。

これまた、どう見ても単なるコイルとしての特性です。

インダクタンスは200KHzで約19.5μHに低下しています。これは、相互インダクタンス分のインダクタンスが差引されたためで、つまり教科書通り、磁束キャンセル分のインダクタンスが低下しただけという結果でした。このように、インピーダンス測定からは、何ら不思議な現象の気配は見つかりませんでした。

 

 

インバーターを構成してみる

上のインピーダンス測定ではとらえることの出来ない事象も、もしかしたら、あるかも知れませんので、気をとり直して、この反発磁場型コイルを用いて簡単なインバータ回路を構成し、著者の言うようにMOSFET駆動パルス幅を出来るだけ小さくして、変換効率を測定してみます。

 

実験構成図

電源電圧はDC10Vです。変換効率を測定するために、コイルの端子間に生じる起電力をダイオード(FRD)で整流し、コンデンサ(100μF)で平滑して、負荷抵抗RLに与えます。

 

実験光景

 

動作波形

MOSFETに与えるゲートパルスon時間は200ns.(MOSFETでの遅延があるので、実際のon時間は500ns.程度です)。繰り返し周期は3.3μs.(300KHz)です。CH1(黄)はゲートパルス、CH2(緑)はFETのドレイン電圧、ch3(赤)は出力DC電圧、ch4(青)はコイル電流です。なお、コイル電流は0.2A/divです。

繰り返し周期を短くして行きます。すると、著者の言うように、ある所から急にドレイン電圧の振幅が増大します。

下は繰り返し周期は1.4μs.(720KHz)です。

上の条件では、あまり極端には上昇していませんが、条件によっては、ある周期から、かなり極端に上昇する場合がありました。これが著者の表現するところの雪崩現象なのでしょうか?空間のもつエネルギーが流入したのでしょうか?でも、もし、これがそのことなら、残念ながら、そのような神秘現象ではありません。普通の電気的な出来事です。繰り返し周期をある値より小さくすると、共振電圧振幅の山谷の打ち消しの関係で、上のch4のグラフのようにコイル電流が急に連続的につながり、それによりドレイン振幅電圧値(つまりコイルに掛かる電圧)が急上昇する場合があります。これは異様な現象ではなく通常の現象で、SPICEによるシミュレーションでも確認できます。つまり電気工学的想定内の出来事です。また、この状態だからと言って効率が急上昇することはありません。

 

 

変換効率測定結果

変換効率は出力を直流に変換してから負荷を接続し実効値測定しました。

  • 入力電圧10Vで出力負荷抵抗1KΩの場合の変換効率は平均82.8%
  • 出力負荷抵抗300Ωの場合の変換効率は平均79.5%
  • 繰り返し周期(周波数)は極端な値にしない限り変換効率には殆ど影響しない
  • 通常のコイル(2つのコイルを分離)の場合と反発磁場型コイルを用いた場合での変換効率に差異はない

という何とも凡庸な結果となりました。

 

残念ながら

今回の基礎的な検証実験では、著者の言うような、エネルギー流入とか超効率と言うような特異な現象を確認することは全くできませんでした。残念ながら超効率インバーターというのは上記の考察と疑問点で書きましたように井出治さんの大勘違いなのかも知れません。しかしながら、この検証実験結果はぜんぜん完全なものではありません。実験手法の不具合や僕の勘違いや知識不足等により、まだまだ見えていない現象が、もしかしたら、あるのかも知れません。

投稿:2012/6/23

追記:2014/7/24(コンテンツメニューを追加)

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