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誘導加熱で遊ぶ(共振型インバーター)

 

誘導加熱とは

誘導加熱とはいわゆるIH調理器のIH(induction heating)のことです。導線(1次コイル)に時間的に変化する電流(交番電流)を流すと時間的に変化する磁界(交番磁界)が発生します。すると不思議なことに、近くにある導線(2次コイル)にも電流が流れます。これを電磁誘導と言います。

この電磁誘導を用いた加熱方法を誘導加熱(induction heating)と言います。2次コイルがそのまま被加熱体となる訳です。例えば、家庭用IH調理器具で言うと、調理器具内に1次コイルがあり、その上に乗せた金属製のお鍋の底が2次コイルとなります。その2次コイルで生じた誘導電流(うず電流)が鍋底の抵抗(負荷)に流れることによって生じた電力により発熱させるのです。つまり鍋底は2次コイルでもあり負荷抵抗(発熱体)でもあるのです。このように磁場を媒介とすることによりエネルギーを伝達し、物質的には非接触でありながら対象を自己発熱させることが可能なのです。

 

蛇足

トランス(変圧器)として考えると、1次コイルが加熱用コイルで、2次コイルに相当するものが被加熱体それ自身で、2次コイルはショートしていて、コイル自身の抵抗値で自己発熱すると考えると分り易い?かも知れません。

 

誘導加熱と誘電加熱との違い

ここで実験する誘導加熱とよく似た現象に誘電加熱というのがあります。でも、両者は似て非なるもので、むしろ双対の関係にあります。誘導加熱は磁界の変化によるものですが、誘電加熱は電界の変化によるものです。長々と説明するより夫々のポイントを下に羅列してみます。

 

誘導加熱(induction heating)

誘電加熱(dielectric heating)

  • 磁界の変化(交番磁界)が作用
  • 構成体はコイル
  • 導体(抵抗体)を加熱
  • 渦電流によるジュール熱
  • 実用例はIH調理器(電磁調理器)

  • 電界の変化(交番電界)が作用
  • 構成体はコンデンサ
  • 絶縁体(誘電体)を加熱
  • 誘電損失による摩擦熱
  • 実用例は電子レンジ(マイクロ波調理器)

 

 

 

共振型インバーター

今回の電磁誘導加熱実験遊びでは他励式共振型インバーターを用います。とてもシンプルで効率のよい手法です。下図(原理図)のようにLC共振回路に、その固有振動数に等しい振動数でスイッチング(ON/OFF)された電流を印加するだけです。すると非常に効率よくLC共振回路にエネルギーを供給することが可能となります。

ωoはLC共振回路の固有角速度でfoが固有周波数です。LC共振回路は外から見ると並列共振回路と振る舞い、中(コイル)から見ると直列共振回路と振る舞います。つまり共振時には(固有振動数foにおいては)コイルから見とLCループのインピーダンスは最小となり大きな共振電流を維持することが可能となり、結果として効率よく大きな交番磁界を生成することが可能となります。

 

 

実験回路構成

実験回路は上記原理図の切替スイッチをPOWER MOSFETで置換した回路です。この回路ではハイサイドドライブは必要ないので適当なトランジスタ回路でも可能ですが、市販のFETゲートドライブIC(例えばIR4427などは秋月で100円で買えます)を用いた方が簡単確実です。発振原はTTLレベル出力可能な適当なパルスジェネレータを用います。MOSFETのドレインと電源との間にはチョークコイルを挿入して高周波電流を遮断します。

蛇足

コイルに印加する電圧はON/OFFパルス(矩形波)ですが、コイルに流れる電流は周波数foの正弦波となります。

コイルには電源電流よりずっと大きな電流を流すことが出来ます。(もちろん電源電力(消費電力)より大きな電力をコイル与えることは出来ません)

 

実験してみました

こんな感じです。2つのトロイダルコイルはチョーク用です。

 

これが加熱用コイルです。

 

10秒程度で木ねじが真っ赤になりました。

今回の発振周波数は50KHz程度です。

電源電圧は20Vで電流は10A程度でした。

 

 

次期バージョン

もっと大電力を出せる試作機を検討中です。

ネジや釘が線香花火のようにパチパチするかな?

 

何かの参考にならば幸いです。

投稿:2013/11/25

加筆修正:2015/1/8

 

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