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マックスウェルの悪魔


『マックスウェルの悪魔』ってご存知でしょうか?

19世紀中頃、スコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マクスウェルが考え出した想像上の存在で、もちろん実存する生き物ではありません。しかしながら、この魔物は物理学(熱力学)の根幹を揺るがす存在であり、世紀を経ても多くの科学者達を悩ませました。現在では、いちおう解決(この魔物は存在しないと)されているものの、完璧に論理的証明された訳ではありません。現に、今尚この魔物に取り組んでいる研究者もいますし、それに関する論文や特許が毎年世界中で出されています。

上の写真は都筑卓司著『マックスウェルの悪魔』講談社ブルーバックス

のp.220からコピーしたものです。

 

ここでは、この『マックスウェルの悪魔』を非常に簡単ではありますが、ご紹介したいと思います。ただ、この魔物は物理学的概念であり、正しく伝えるには数学的記述が必要なのですが、ここでは、あくまでも分りやすさを最優先して書きますので表現に曖昧性があります。予めご容赦ください。

お湯を沸かすにはガスコンロに点火する必要があります。なぜでしょう?
テーブルに置いているヤカンの水が勝手に沸かないのはなぜでしょう?
この質問、非常に馬鹿馬鹿しいように思えますが、実は、そうではありません。通常の室温でも熱エネルギーは存在しています(絶対零度の-273℃でない限り熱は存在しています)。では、なぜその熱を用いてヤカンのお湯を沸かすことができないのでしょうか?

 

その答えは、この世界には熱力学第2法則(エントロピー増大則)があるからです。この法則により、熱は必ず温度の高い方から低い方に移動する(その逆はあり得ない)とされているからです。
『マックスウェルの悪魔』とは、この法則に風穴を開けようとする存在なのです。

 

では、マックスウェルの悪魔の働きを簡単なモデルで見ていきます。


容器に入った気体を考えます。その気体の温度は均一です。この容器の中央に仕切り板を入れ気体を左右に分けますが、この仕切り板には開閉できる窓があり、マックスウェルの悪魔はその窓を自由に開閉することが出来ます(この窓を開閉する作業にはエネルギーは要りません)。そして、悪魔は、左から右へ速い分子が来た時と、右から左へ遅い分子が来た時に窓を開け分子を通過させます。この作業をひたすら繰り返します。すると、仕切り板の右側には活発な分子が集まり、左側には不活発な分子が集まります。つまり、右側の温度が高く、左側の温度が低くなるわけです。これは、エネルギーを使わずに熱の移動を可能とするものであり、熱力学第2法則(エントロピー増大則)に対する科学史上の重大なパラドックスとして知られているものです。

 

もし、マックスウェルの悪魔を捕らえて利用することが出来たならどうなるでしょう?そう、永久機関が可能となり、環境汚染もなくエネルギーを生み出すことが可能となります。文字通り夢の世界が到来するわけです。どうです?マックスウェルの悪魔を探してみませんか?少なくとも思考ゲームとしては面白いですよ。

 

参考図書

もしマックスウェルの悪魔ご興味持って頂けたら下記書籍が非常に分かりやすくおすすめです。

 

備考

この記事は僕の参加しているサークルの機関誌のコラムとして書いたものの転載です。

投稿:2011/6/9

追記修正:2012/10/17

 

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