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電流出力アンプ(電圧−電流変換回路)の基礎考察

電流出力アンプ(電圧/電流変換)とは

一般的なアンプ(リニアアンプ、線形増幅器)は電圧として入力された信号に適宜な増幅を施した後に電圧信号として出力するタイプが殆ど(ほぼ全て)です(結果として電流や電力を増幅するものであってもアンプとしては電圧として出力されています)。それに対して電流出力アンプとは、入力電圧信号に比例した電流として出力するタイプのアンプ(増幅器)のことです。つまり電圧−電流変換回路ということになります。

 

電流出力アンプのメリット

実は、多くのアクチュエーター(駆動装置)や熱源(ニクロムヒーターなど)や光源(電球やLEDなど)は流れる電流(電圧ではありません)によってその効を奏しています。スタイルとしては電圧を供給する形をとっています(その方がずっと簡単だから)が、本質的には、その電圧印加によって流れる(その瞬時瞬時の電圧値をインピーダンスで除算した)電流が本質的なのです。

ちょと例を挙げて説明しますと、オーディオスピーカー(ラウドスピーカー)も電流によって動く典型的なアクチュエーターの一つです。でもオーディオアンプでは電圧としてスピーカーに印加しています。その結果、流れる電流はスピーカーのインピーダンス(周波数によって異なる抵抗値)の影響やケーブルインピーダンスの影響をモロに受けています。もしスピーカーを電流でドライブすることができたならスピーカーのインピーダンスやケーブルの影響をリジェクトでき、ある意味理想的なドライブとも言えるのです(もともと電圧駆動を前提に作りこまれた製品(スピーカーユニット)なので、電流駆動により音が良くなるとは全く限りませんが・・)。

 

追記

アンプというよりは電源供給(直流)での電圧・電流駆動に関する分り易い例ですが、LED(発光ダイオード)は典型的な電流素子(半導体の大部分は電流素子)です。LEDを電圧で発光させようとした場合、必ず抵抗器(電流制限抵抗と呼ばれています)を直列に挿入します(そうしないとLEDが破損します)。これは電流素子であるLEDを無理矢理に電圧で制御しようとするから必要となるのです。抵抗を直列に挿入することにより簡易定電流回路的に制御されLEDの急峻な負荷特性を上手く吸収している訳です。

 

 

最も簡単な電流出力アンプ(電圧/電流変換)回路

最も簡単なバイポーラ出力(正負出力)可能な電流出力アンプ(電圧/電流変換)回路は下図のようにOPアンプ1個で実現できます。Viが入力電圧でioが出力電流です。RLは負荷抵抗(負荷インピーダンス)です。

 

非反転(入力と出力が同位相)増幅タイプ

最も簡単な電流出力アンプ(電圧/電流変換)回路(同相)

 

このように出力電流ioは負荷抵抗(負荷インピーダンス)RLの影響を受けることなく入力電圧Viと抵抗Riによって決定されます。抵抗Riを固定(比例定数)とする入力電圧Viに比例した出力電流を取り出すことが可能となるわけです。下に反転(入力と出力が逆相)タイプも下に示しておきます。

 

反転(入力と出力が逆相)増幅タイプ

 

最も簡単な電流出力アンプ(電圧/電流変換)回路(逆相)

ちなみに式@Bの成立根拠はOPアンプのイマジナリーショートとは?をご参照ください。

上記回路はシンプルですが出力がGND基準ではない(フローティングのような感じの出力)ですので使用条件がかなり限定されてしまいます。次にGND基準でバイポーラ出力(正負出力)可能な現実的回路方式を示します。

 

GND基準として出力可能な電流出力(電圧/電流変換)回路

基本回路構成はこんな感じです。

例えばRs=100Ω、Ri=10KΩ、Rf=10KΩでVb=1Vを入力すると出力電流Ioは10mAとなります。

 

補足

別の解法もオマケとして示しておきます。

差動増幅回路の変形(応用)?と考えた方が分り易い?かもしれません。

精度が必要ではない場合やRfに対してRsを十分小さく設定(Rf>>Rs)可能な場合はバッファアンプ(ユニゲインアンプ)が省略(直接続)可能です。

 

出力電流を強化した電流出力アンプ

やはりOPアンプだけですと出力電流は数十mA程度が限界なのでパワーアンプ(電圧利得1倍の電流増幅回路)を付加して出力電流を強化した実用的な回路を示しておきます。

 

 

オペアンプはLF356、uPC842、AD712、AD823、TL074、4558 などなどです。紫色の部分がパワーアンプ部でダイアモンド回路と呼ばれているものです。パワートランジスタは適当なコンプリメンタリペアーです。今回は2SB1335Aと2SD1855Aを用いました。

 

例えば上図のように、Ri=Rf=10KΩ、Rs=1Ωとすると、 Io=−Vi の関係となります。 つまり、1V入力時に1Aの電流を出力します(位相は逆相です)。このようにスピーカー等のパワフルなアクチュエーターを十分にドライブ可能とまります。試作回路はこんな感じです。

この電流出力アンプで音楽を聴いてみました。

 

 

電流出力アンプの実際的な問題

最も注意しなければならないことは、実際の出力範囲は電源電圧に制限されると言う点です。特にインピーダンス変動幅が大きな負荷ではかなり制御範囲が限られる場合があります。また逆に十分なダイナミックレンジを確保するためにかなり大きな電源電圧が必要であったり、そのため損失が異常に大きなものになったり、計算してみると全く非現実的だったりします。

 

負荷特性も含めてのシステム的用途であったり実験的用途であったりではとても有益な手法なんですが汎用的アンプとしては多くの課題(問題点)をもつ手法のように思います。

 

補足

リニア回路的にはかなり制限されてしまう手法なんですが、スイッチング回路と組み合わせた展開が非常に面白いと考えています。

 

 

おまけ・電流吸込み型の電流出力アンプ(定電流負荷回路)

これはアンプというよりは電源/負荷に関してですが、例えば下図のように構成すると入力電圧Viにより自由にコントロールできる負荷装置と見ることができ、簡単に作れる実験的負荷装置を実現できます。

流したい電流に応じたパワートランジスタを選択します。OPアンプのドライブ電流不足の場合はFETやバイポーラTRによる前段(ダーリントンなど)を追加します。上図は吸込み電流型ですが、PNPトランジスタを用いて上下(極性)構成を変えれば吐き出し型も可能です。

 

投稿:2013/11/16

 

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